恩寵の短剣

 


 

データ詳細

 

L:恩寵の短剣 = {
 t:名称 = 恩寵の短剣(アイテム)
 t:要点 = 記念品,Zマーク,笑顔になる
 t:周辺環境 = 地球への帰還軌道
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *恩寵の短剣のアイテムカテゴリ = ,,,着用型アイテム。
  *恩寵の短剣の位置づけ = ,,,武器。
  *恩寵の短剣の着用箇所 = ,,,その他。
  *恩寵の短剣の形状 = ,,,ナイフ。
  *恩寵の短剣の白兵距離戦闘行為補正 = 白兵距離戦闘行為,,条件発動,(白兵距離での)攻撃、評価+1。
 }
 t:→次のアイドレス = 助けてダガーマン(イベント),3000マイルレイルロード(イベント),ダガー訓練(イベント),訪問旅行(イベント)


SHQ効果により白兵+2

所持者:沢邑勝海(EV116リザルト・星鋼京で入手) 参照URL
SHQ根拠 参照URL

恩寵の短剣、そしてそれにまつわる話

 





        恩寵の短剣。

        イベント116第二波――

        オリオンアームよりテラを守る命運を受けた者たちが、その勝利を祝い拝領した短剣である。



        メイドエプロンの沢邑勝海は恩寵の短剣を磨いていた。

        出で立ちと相まってさながら美術品の手入れのようにも思えるが、違う。

        恩寵の短剣はこれまでも幾度となく、彼女を助けてきた。

        キノウツンの戦士として、ミフネ、ムラマサという共和国でも名高い白兵職を気取りはじめた今でも、それは同じことである。



        この短剣には、力があった。持つ物に白兵戦能力を与えるものだ。

        沢邑は思う。

        この短剣には、力がある。

        Zのマークが刻まれた青い刀身を覗き込むと、懐かしい笑顔が映る。

        テラを守り、そしてテラへと帰る。

        ――その時に星鋼京の仲間たちが見せた、笑顔だった。

        沢邑は悲運の女だった。

        だが、それにくじけぬあきらめの悪さと、勇猛さがあった。

        谷口がキノウツンを出て帝国に召し抱えられたときもそうだ。

        彼女は即座に国を出奔し、そして星鋼京へとなだれ込み、暴風へと乗りこんだ。

        キノウツンのメイドから、ガンスリンガーメードへと志願したのである。

        それがどれほどの覚悟と意志を要したのか、想像に難くはない。



        沢邑もまた、この短剣を磨くたびにその時の自分の意志の気高さを思い出す。

        そのせいだろうか。

        恩寵の短剣を眺めるたびに、沢邑の胸には決意が蘇る。

        消して諦めないという覚悟と意志が。

        ――どこまでも飛び出してでも、この気持ちを諦めるものかと思いが。



        まるでこの短剣は、あのときのがむしゃらな気持ちが結晶となって、この胸から飛び出てきたかのよう。

        そう思わせるのが恩寵の短剣だった。



        この短剣には、力がある。

        この剣の持ち主に白兵の能力を与えるというものである。

        整備士でも、医師でも、民間人でも――メイドでも。誰の誰でも。

        剣を持ち手、敵と戦い、最後の最後の最後まで諦めぬ力を与えてくれる。



        その力の名を人は知っている。



        磨き終えた刀身を天井にかざす。

        地球と同じ色をした短剣。沢邑は思う。

        たとえ刀が、意志が折れようと、わたしにはこの短剣がある。

        ならば、最後まで戦おう。

        青を隣に宇宙の暗黒の暗黒を睨み、この勇気で、最後のその時まで。






1/1恩寵の短剣 製作過程



●素材・製作方法
素材:ガラス
製作方法:キャスト技法


●制作期間
デザイン・原型:三週間
焼成:一週間
研磨:四ヶ月


●作成過程



 まず、デザインを考えながら粘土で剣の原型を作成します。
 材質がガラスのため、完成後は大幅に削ったり、細かい修正ができません。
 そのため、この時点で丁寧に作成しておきます。





 原型が完成したら原型の周りに離型剤を塗ってプラスチックの枠を巻きます。
 プラスチック枠の縁を粘土で固定した後、水に溶かして液状にした耐火石膏を流し込みます。
 耐火石膏は文字通り名の通り高温の火や熱に強い石膏です。
 高熱の炉で長時間焼成するキルンワークでは必ずこれで原型を作成します。





 耐火石膏は30〜40分ほどで硬化するので、硬化を確認した後、枠を取って扱いやすいように角を削り、粘土を取り除きます。





 それが終了したら、さらに海綿と流水を使って原型内に張り付いた粘土を洗い流します。
 さらに原型の形を滑らかにするために中を洗浄します。
 また、焼成時の原型ひび割れ防止のため、針金と少量の耐火石膏を使い周辺を補強します。
 これでガラスを流し込む為の原型は完成します。





 原型が完成したら、型につめるガラスを用意します。
 今回使用するのはビレットと言われるガラスの塊。野球の硬球を半分ほどにしたサイズです。
 何故原料がこんな大きいサイズかと言うと、単純に大きなガラスの塊の方が焼成した際気泡が入りにくく、透明なガラスができるためです。
 ちなみに普段はカレット(大きさ3mm〜粉末状のガラス)を使用しており、このサイズは使用するのは初めてだったりします。





 それはさておき、原型の容積を計算し、それに基づいたビレットの必要量を用意し、エタノールとキッチンペーパーで表面の汚れと埃をふき取ります。
 この作業をしっかりしておかないとガラスの内部に不純物が混ざるので丁寧に行います。





 型に入るビレットはサイズ的に入る物のみ原型を壊さないよう気をつけて投入します。
 ただし、サイズ、模様などの問題でビレットを置くのが難しい場所には内部を耐火石膏で覆った穴あき植木鉢を用意し、原型の上に乗せてビレットを植木鉢に投入します。
 こうしておくと、焼成炉内部でビレットが溶け流動状になった際、植木鉢に開いた穴から原型に流れ込み、結果原型を傷つけずに透明度の高いガラスを原型に入れるできる訳です。

 ここまで終わったら一度作業は終了。後は電気の焼成炉に入れます。
 焼成炉による焼成は約一週間ほど。火を入れてガラスを溶かすのに2〜3日、冷却に4〜5日ほどかかります。
 ガラスと言う素材は急激に熱や冷気を加えると破裂してしまうので、徐々に温度を上げ、また、徐々に熱を下げるのが重要なポイントです。





 ガラスの焼成が終わり、十分に徐冷が終わった後、焼成炉より取り出し、加工に入ります。





 植木鉢の中から溶け出したガラスを切り取り、原型を割り出します。




 割り出しが終わった後、水とエアーで石膏を払い、研磨作業に入ります。
 作品の完間近のせいか、実はここが一番危険かつ面倒な作業だったりするので気を引き締めて加工に入ります。





 まず、研磨機で怪我をしそうな角を削った後、300番の耐水ペーパーで石膏に触れていたガラス部分全体を機械を使わず手で丁寧に磨いていきます。
 そして、十分滑らかになったら600番の細かい耐水ペーパーで同じ作業を繰り返します。
 この耐水ペーパー作業、地味な上に時間がかかるわ体力奪われるわでかなり疲れます。
ただし、ここでしっかり磨いておかないと次の作業にかなり支障が出るのでじっと我慢しながら磨きます。





 この工程が終わった後、ようやく研磨剤を使った機械磨きで艶を出します。
 ただし、この機械磨き、非常にガラスに熱を与えやすいので少し磨いたら冷却磨いたら冷却を繰り返しさないと摩擦熱でひび割れますので注意。
 こうして、時間をかけて地味な作業を繰り返すと完成です。



●おまけ・サイズ比較



 短剣のサイズをペットボトルと比較するとこんな感じです。(本研磨前に撮影)





 手に持つとこんな感じです。
 ちなみに完成後は工房内のメンバーでサスペンスごっこや海のトリ○ンごっこが流行ったのは秘密です。

(文章:はる)
(イラスト・ガラス製作・ガラス製作解説文:沢邑勝海)


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