●素材・製作方法
素材:ガラス
製作方法:キャスト技法
●制作期間
デザイン・原型:三週間
焼成:一週間
研磨:四ヶ月
●作成過程
まず、デザインを考えながら粘土で剣の原型を作成します。
材質がガラスのため、完成後は大幅に削ったり、細かい修正ができません。
そのため、この時点で丁寧に作成しておきます。
原型が完成したら原型の周りに離型剤を塗ってプラスチックの枠を巻きます。
プラスチック枠の縁を粘土で固定した後、水に溶かして液状にした耐火石膏を流し込みます。
耐火石膏は文字通り名の通り高温の火や熱に強い石膏です。
高熱の炉で長時間焼成するキルンワークでは必ずこれで原型を作成します。
耐火石膏は30〜40分ほどで硬化するので、硬化を確認した後、枠を取って扱いやすいように角を削り、粘土を取り除きます。
それが終了したら、さらに海綿と流水を使って原型内に張り付いた粘土を洗い流します。
さらに原型の形を滑らかにするために中を洗浄します。
また、焼成時の原型ひび割れ防止のため、針金と少量の耐火石膏を使い周辺を補強します。
これでガラスを流し込む為の原型は完成します。
原型が完成したら、型につめるガラスを用意します。
今回使用するのはビレットと言われるガラスの塊。野球の硬球を半分ほどにしたサイズです。
何故原料がこんな大きいサイズかと言うと、単純に大きなガラスの塊の方が焼成した際気泡が入りにくく、透明なガラスができるためです。
ちなみに普段はカレット(大きさ3mm〜粉末状のガラス)を使用しており、このサイズは使用するのは初めてだったりします。
それはさておき、原型の容積を計算し、それに基づいたビレットの必要量を用意し、エタノールとキッチンペーパーで表面の汚れと埃をふき取ります。
この作業をしっかりしておかないとガラスの内部に不純物が混ざるので丁寧に行います。
型に入るビレットはサイズ的に入る物のみ原型を壊さないよう気をつけて投入します。
ただし、サイズ、模様などの問題でビレットを置くのが難しい場所には内部を耐火石膏で覆った穴あき植木鉢を用意し、原型の上に乗せてビレットを植木鉢に投入します。
こうしておくと、焼成炉内部でビレットが溶け流動状になった際、植木鉢に開いた穴から原型に流れ込み、結果原型を傷つけずに透明度の高いガラスを原型に入れるできる訳です。
ここまで終わったら一度作業は終了。後は電気の焼成炉に入れます。
焼成炉による焼成は約一週間ほど。火を入れてガラスを溶かすのに2〜3日、冷却に4〜5日ほどかかります。
ガラスと言う素材は急激に熱や冷気を加えると破裂してしまうので、徐々に温度を上げ、また、徐々に熱を下げるのが重要なポイントです。
ガラスの焼成が終わり、十分に徐冷が終わった後、焼成炉より取り出し、加工に入ります。
植木鉢の中から溶け出したガラスを切り取り、原型を割り出します。
割り出しが終わった後、水とエアーで石膏を払い、研磨作業に入ります。
作品の完間近のせいか、実はここが一番危険かつ面倒な作業だったりするので気を引き締めて加工に入ります。
まず、研磨機で怪我をしそうな角を削った後、300番の耐水ペーパーで石膏に触れていたガラス部分全体を機械を使わず手で丁寧に磨いていきます。
そして、十分滑らかになったら600番の細かい耐水ペーパーで同じ作業を繰り返します。
この耐水ペーパー作業、地味な上に時間がかかるわ体力奪われるわでかなり疲れます。
ただし、ここでしっかり磨いておかないと次の作業にかなり支障が出るのでじっと我慢しながら磨きます。
この工程が終わった後、ようやく研磨剤を使った機械磨きで艶を出します。
ただし、この機械磨き、非常にガラスに熱を与えやすいので少し磨いたら冷却磨いたら冷却を繰り返しさないと摩擦熱でひび割れますので注意。
こうして、時間をかけて地味な作業を繰り返すと完成です。
●おまけ・サイズ比較
短剣のサイズをペットボトルと比較するとこんな感じです。(本研磨前に撮影)
手に持つとこんな感じです。
ちなみに完成後は工房内のメンバーでサスペンスごっこや海のトリ○ンごっこが流行ったのは秘密です。
(文章:はる)
(イラスト・ガラス製作・ガラス製作解説文:沢邑勝海)
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